こんなに心を揺さぶられた本を読んだのは初めてかもしれない。
10代の大半を“奴隷”として過ごしたメンデ・ナゼールさんが2004年に出版したノンフィクション自叙伝『From Slavery to Freedom』の日本語版『メンデ ‐ 奴隷にされた少女』。
今日はこの本のブックレビューを書いてみたいと思う。
【レビュー】『メンデ ‐ 奴隷にされた少女』
あらすじ
主人公はメンデ。スーダン中部の少数民族ヌバ族の女の子。
1990年代のスーダンでは、「奴隷狩り」という少数民族の村を焼き討ちにし、成人男性は殺害・女性や子どもは人身売買によって奴隷としてスーダン国内の金持ちの富豪へと売られるということが、暗黙のうちに行われていた。(今も行われているのかもしれない)
自叙伝は、メンデの幼少期の村での温かい家族に囲まれた幸せな暮らしぶりから始まる。兄・バボが大病を患い生死をさまよった経験から、成績優秀なメンデは将来医師になることを決意し、勉強に励み、成績も優秀だった。
しかし、メンデが小学校6年生になったある日、彼女の村がアラブ人によって襲撃される。そこでさらわれたメンデは、首都ハルツームに連れて行かれ、ある富裕層のアラブ人の家で奴隷として働かされる。メンデはまるで家畜のように扱われ、家族の消息もつかめぬまま、孤独に満ちた生活を送る。
その後、とあることがきっかけで、メンデはイギリス・ロンドンに向かうことになるが…
読んでみた感想
まるで地獄のような奴隷としての生活にメンデがどのように立ち向かうかは、実際に読んでみて欲しい。
本当に泣けるから。
ぼくは今まで数多くの本を読んできたけれど、ここまで心を揺さぶられた本は今までなかったと思う。
自分の村で家族と幸せな生活を送っていたメンデが、民族間同士の対立・差別の末に生まれた『奴隷狩り』によって、夢も家族との暮らしも全て奪われてしまう。そこから奴隷として働かされ、「ご主人様」の命令には一切逆らえず、残飯を食わされながら、休日もなく一日中無給で働かされる。
そんな辛い生活を送っていたメンデがどのようにこの状況を打破していくかが読みどころの1つではあったんだけど、少なくとも2000年代前半までは奴隷制度がスーダンにあったということに、まず驚かされた。
そして、今でもその奴隷制度や人身売買がスーダンやその他の国では残っているとするなら、その子たちの境遇を考えると胸が締め付けられる。
奴隷として扱われていた方の心情が主観的に書かれた本。確かな記憶にもとづいた細かな心情描写は、本当に多くの人に読んで知ってほしいと思う。
この本から学んだこと10個を箇条書きしてみる
- 忍耐力・諦めないことの重要性
- 家族愛
- ヌバ族の『Female Genital Mutilation、略称FGM;「女性性器切除」』という悪習
- スーダンにはびこる奴隷制度の存在
- 奴隷として扱われる子ども達の恐怖・心情
- 奴隷狩りの実情
- スーダン国内の民族間対立
- スーダン中部の少数民族ヌバ族の生活
- 1990年代のスーダンの歴史
- 1990年代のスーダンの首都ハルツーム、中部の都市ディリング、東部の都市カッサラ(←ぼくの派遣予定都市)の様子
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